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Everton Nelson インタビュー
--- 今回のレコーディングへの経緯を教えてください
Everton Nelson(以下E):
下田さんからメールをもらって、ぜひ参加して欲しいと言われたんだ。前作でもストリングスで参加していたからね。
--- 参加した理由は?
E: 前作は自分自身、すごくいい経験になったんだ。下田さんとの仕事は、とても自由な感じなんだ。もちろん自由というのは、いいことも悪いこともあるんだけど、あのときはとてもいい方向に進んでいたしね、今回もぜひ一緒にと言われて、すごく楽しみにしていたんだよ。
--- 最初にデモを聴いたときの印象は?
E: 個人的には、前作との間に何らかの共通点があると思うよ。特別、新しいことをやっているわけじゃないんだけど、音楽に対する彼の誠実さを感じずにはいられないね。音楽的にクリアなんだ。デモには、すでにストリングスのアイデアのようなモチーフは入っていた。それをいかに活かしてサウンドに仕上げるかが僕の仕事だったな。
--- アレンジはどのようなイメージで進んでいったんですか?
E: 下田さんは、僕がどのようにサイレント・ポエツを理解しているかはきいてこないし、僕も敢えて彼の作ろうとしているサウンドを細かに説明を受けていないんだ。サウンドコンセプトも言葉では聞いていない。僕は僕なりの解釈でやるだけ。でも、ただストリングスをかぶせるということではなく、僕のストリングスがどれだけ彼のサウンドの一部になれるかが重要だと思ってアレンジをしているね。
--- サイレント・ポエツのサウンドを表すキーワードって何でしょうか?
E: ソニック・コンパティビリティ…かな。自分の感性と彼の感性を言葉を介さずに、一瞬にして分かり合うってこと。言葉を使うよりも、音を使って、お互いに気取らずに自分たちが描こうとしているサウンドスケープを重ねあうことが一番素晴らしいと思うよ。
--- 今回は二十人のストリングですが、けっこう規模が大きいですね。
E: まず、やってみたかったってことさ。それと、同じ楽器で何度もダビングを重ねるよりも、楽器それぞれが持つ特徴が重なり合って同時に鳴らされるほうがいいサウンドになるからね。
--- ストリングスのメンバーの選出はどのように?
E: 主にドイツ人のメンバーで構成されている。僕がこれまでに一緒に仕事をしたオーケストラのメンバーたちだよ。編成的には、第一バイオリン6名、第二バイオリン6名、それにヴィオラ、チェロとコントラバス。チェロとコントラバスがユニゾンしたり、また二つの旋律に分かれてってヴィオラとチェロがユニゾンする。二つのバイオリンは独立機能で第一バイオリンは主に主旋律を、第二バイオリンはリズムを司っている。僕の背景はもともとインスト音楽ばかりだった。ビートのある音楽をアレンジするようになったのは、仕事を始めてからずんぶんあとのことだったんだ。
--- スタジオはどうやって選んだのですか?
E: たくさんのセッションでいろんなスタジオを使ってみたけど、相性がいいのは3つでね。EMIのアビーロードもいいけど、エンジェル・スタジオにはスティーヴン・ブライスというロンドンでも指折りのハウスエンジニアがいてね、彼のストリングスサウンドは最高だよ。スタジオも大き過ぎず小さ過ぎず、立地条件も居心地もとてもいいんだ。
--- レコーディング・セッションの印象は?
E: うーん、いつだって、やり残したことがあるような気がしてしまうからね。ストリングスの譜面を書いても、頭で鳴っていたのと同じ音になるとは限らないもんだ。メンバーにも楽器にも大きく左右される。ただ仕事でやっている人たちの音と、音に共感を持ってくれている人たちとやるのとでも全然仕上がりが変わってしまう。メンバー全員が必ずしも僕のアレンジにしっかりと共感してくれるとは言えない。だけど、それを楽しんで、「もっとやってみよう」「次はこんな感じで」とか言いながらね。集中力を途切れさせないようにしながら繰り返しやっていくといい結果が生まれるね。
--- 今回、手がけた作品の中で一曲だけすごく手こずっているのがありましたよね。それは、どんなところが難かしかったんでしょうか?
E: あれはね、最初はインスト曲のはずだった。そこにヴォーカルが入っていたんだ。それでベーシックトラックをいくらかやり直したんだが、するとヴォーカルを削ってもっとインスト曲に近くしてほしいと言われた。もうヴォーカル用に作り直したあとだったから両立が難しくなってしまったんだ。そこでヴォーカルに比較的寄り添えていたキーボードとピアノのパートを強調してみることにしたんだよ。そうだなぁ、こういう作業ってのは部屋の模様替えみたいだと思うんだ。ひとつの部屋の中でいくつかの家具。テレビを真ん中に置いてみたけど何かしっくり来ない。それで照明の位置を変えてみる。鏡の位置を変えると明かりの雰囲気も変わって、テレビが真ん中でもいいかもしれないと思うようになる。つまりね、何かの位置を変えるときはその全体を見なきゃならないってことさ。
--- サイレント・ポエツにあなたが〈共感〉しているポイントは?
E: 〈誠実さ〉に尽きるね。彼との仕事は常にそこに還っていくんだと思っている。つまらないギミックもない、思わせぶりな隠れたメッセージのようなものも不要だ。音楽として真っ直ぐにあるために、頭でっかちなヒネリもいらない、デコレーションなんてもっての他だ。穏やかで、暖かく、実直な物語性に富んでいる。その誠実さこそが下田さんの音楽に僕が共感しているところだよ。
--- あなたは坂本龍一さんとも仕事をしていますよね。彼と下田さんの音楽に共通点というのはあるんでしょうか?
E: うん、あると思うな。二人とも非常に繊細であるということからして共通している。シンプルな要素を静かに折り重ねていくような作り方をするからね。穏やかさ、物語性というところでも僕は同じように共感をしているから、近いところはたくさんあるんじゃないかな。
--- アランとの仕事はどうでしたか?
E: アランと仕事をするのはほんとうに楽しいね。楽しいってこと以外には何もないくらいさ! もちろん、彼はすごく厳しい人だ。〈僕がやるのはこれ。君がやるのはこれ〉、〈僕が必要なのはこれ、君が必要なのはこれ〉。役割分担も極めて明解。金銭的なやりとりもストレートだし、締め切りに遅れることは絶対に許さない。でもそれはとってもいいことなのさ。つまり、やるべきことを、きちんとやることが出来るからこそ、仕事は具体的で、リラックスさえ出来るからね。
--- ショーンはどう?
E: 大好きさ。もし好きなシンガーはときかれて、マーヴィン・ゲイとスティーヴィ・ワンダーの名前を挙げるとしよう。そこにショーンの唄が流れてきたら、〈この声も同じくらいに好きだ〉と答えるだろうね。何年か彼には会っていないが、才能のある男だとずっと思っているよ。
--- 今回のサイレント・ポエツの作品を〈音〉以外に喩えるとしたら何が思い浮かびますか?
E: 厳寒の地にある一軒家かな。外の寒さは厳しい。でも家に一歩入ると大きくて見るからに暖かな愛のある炎が暖炉にあって、すごく心地が良くなる。そこに夕飯が運ばれてくる。豪華なもんじゃない。でも大きなボールにいっぱいの温かなスープと焼きたてのディナーロールだ。すっかり嬉しくなる。この音楽から思い浮かぶのはそういう光景だよ。窓からはきっと美しい湖が見えているに違いないね。雪も降っている。素晴らしい光景だ。
--- この仕事のあとはどんな予定が?
E: いつもの仕事に戻るよ。たくさんの断片、セッション…。あとリドリー・スコットの新作『天の王国』の音楽もアビーロードで録ってる。他にもイギリスの作曲家の音楽を録っている。これはアメリカで録音するんだ。けっこう僕はあちこちにツアーしているほうだね。少しずつではあるけど自分のアルバムの準備もしてはいるんだ。忙しすぎてちっともまとまらないんだけど、近いうちにきちんと着手したいとは思っている。
Interveiw by Tomoki Ohno

Michiharu Shimoda
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DJ Yellow a.k.a Alain Ho
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Everton Nelson
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Shawn Lee
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