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DJ Yellow a.k.a Alain Ho インタビュー (2005/2/2 パリ/プセ・スタジオ)
--- まず、今回の作品に携わることになった経緯を教えて下さい。
DJ Yellow a.k.a Alain Ho(以下A):
2002年に、当時、自分が関わっていたイエロープロダクションズでサイレント・ポエツの作品をリリースしたんだ。セールス面も含め、評判が非常によく、自分でも、とてもいい仕事ができたと思ってね。だから、次は制作のところから一緒にやろうって、下田と話していたんだ。今回は、それがようやく実現したんだよ。
--- 下田さんから、デモテープを貰った時の印象を教えてください。
A: 最初から非常に気に入ったよ。全体を一貫するヴァイブやアレンジもよかった。ただ自分としては、もう少し「ヨ−ロッパ的な感覚」にアップデートしたいと思ったね。
--- 「ヨ−ロッパ的な感覚」?
A: カルチャ−的な意味でというよりも、あくまでニュアンスなんだけどね。
--- と、いうと?
A: これはオレの印象なんだけど、日本人の作るものって、必ずお手本のようなものがあって、その“真似”のように思えるんだよね。音楽だったら、みんながみんな、70〜80年代風の作品をひとつのスタイルとしてやっているように見えるし、クラブにしても、日本のは大体は海外のクラブをお手本にしてたりするわけでしょ?勿論、丁寧に見ればそれぞれに、オリジナリティはあるんだろうけど、いずれにせよ、そういうお手本を感じさせること自体が、あまりいいとは言えないよね。だから、今回、ひとつ、決めていたのは、パリで一緒に作るってこと。パリで作業をすることで、そういう日本っぽさから離れて、ヨーロッパのオリジナルな雰囲気を付け加えたいと思ったんだ。
--- こういうものを作ろうというのは当初はありましたか?
A: オレは、下田の制作やリミックスについて理解しているけど、自分なりにとにかく思ったのは、今回アルバムは、何かの映画のサウンドトラックみたいだとか、マッシブアタックみたいだとか人に言われたくないものにしたかったってことかな。だって、マッシブアタックのような音楽をここで制作してもしょうがないし、日本人が言うようなブリストルサウンドをここで再現してもしょうがないだろう。自分も下田も、今の音を見つけないといけないし、もともと彼は自分の音にスタイルを持っている人だからね。このコラボレーションを通し、誰も聴いた事のないような新しい音楽を作って、みんなに聴いてもらいたいと思ったね。
--- 今回、ボーカリストのセレクトで悩んだそうですね。サイレント・ポエツの過去のアルバムでは、常に複数のボーカリストをフィーチャーしています。しかし今回は一人に限定にしています。その理由と、その一人にショーンを選んだ理由を教えて下さい。
A: ボーカリストを一人にする事は、じつは最初から考えてたんだよ。何より「サイレント・ポエツ=下田」というイメージを強く打ち出したかったんだ。ボーカリストが多くいることは、いい面もあるけど、どうしても散漫にも聴こえちゃうからね。最初、下田はいやがってたけど、ここは強く言ったね。ショーンに関しては、以前から彼の音楽には興味があってね。まだ大きな成功は収めていないけど、彼は才能のある優れたボーカリストだと思っていたんだよ。ただ今までのサイレント・ポエツだったら、彼にボーカルをとらせることは考えられなかっただろうね。でも、逆にそれが必要だったんだ。下田の音楽だと、普通に考えればホレス・アンディのような人を選んだりするのかもしれない。でも、そういうものは今さらやってみても面白くないだろう。もうマッシブアタックなんかがやってるしね。むしろ、ショーンと下田は誰も考え付かないコンビだと思ったからこそ、絶対にいけると思った。今までにないフレッシュな何かをやらないといけないと思ったんだよ。今回は、ロンドンでレコーディングしたこともあり、以前の作風から続く、ブリストル音楽を想像する人もいるかもしれないよね。でも、今回のサウンドは、まったくと言っていいほど、そういう類いのものではない。むしろ私の中で今回のアルバムはミシシッピーみたいなアメリカの田舎のイメージに近いかな。
--- ミシシッピー? それはずいぶん飛躍している気がしますが、下田さんの音楽の中にそういう雰囲気を見つけたということですか?
A: というよりも、今の時代、エレクトリックミュージックを作る上で、考えざるを得ない部分だっていうかね。ミシシッピーっていうのは、単に場所の問題でなく、むしろブルースなど黒人音楽の原点という意味で受け取ってほしいんだけど。
--- それはどういうことですか?
A: ヨーロッパでは、ここ数年、'80年代風のエレクトロクラッシュのような音楽の存在が大きいだろう。もちろん、それらの中にもいいものはあると思うよ。でもこのシーンは私たちの音楽とはあまり接点がないし、むしろああいう連中が、私たちのシーンの代表みたいになっているのはどうなのかな、とは思うんだよね。だって、もう一年くらいダンスミュージック、エレクトロミュージックの音楽誌が、ブラックミュージックを原点に持つ人たちでなく、フランツ・フェルディナンドのような人達を表紙にしているんだよ。それって相撲の雑誌の表紙に日本人じゃなくて、外国人ばかりなっているようなものでさ。おかしいと思わない?
だから、今回のプロジェクトは、まぁ、私の「プセ」レーベルもそうなんだけど、隠れたコンセプトとして、「ミシシッピー=原点に帰るべき」ということを示したかった。もちろん私たちは黒人ではないけれど、ブラックミュージックの恩恵をたくさん受けたわけだよね。今はあえて、原点に帰って音楽を表現したいと思うんだ。だからこそ、ショーンでもあったんだよね。彼はブルースを感じさせるボーカリストだからね。
--- エバートンとの作業はいかがでしたか?
A: エバートンとは、このレコーディングの前に2回ほど会ってきたからね。コミュニケーションもばっちりなんだけど、とにかく彼はやたらと丁寧なヤツでね。ひとつひとつ確認しながら作業するんだ。だから細かいところまで納得しながらやれたね。
--- 作業中は、どんな内容のことを話すんですか?
A: 彼に参加してもらった曲は、もともとのアレンジでは最終的にコードが落ちるところが多くてね。でも、自分としては、そういうメランコリックな部分を持ちつつも、どこか希望を感じさせるポジティブな雰囲気が欲しかったんだ。その辺りのイメージは彼に伝えたね。もちろん、エバートンはパーフェクトに応えてくれたよ。
--- ショーンには、どういう発注をしたんですか?
A: 彼にはメランコリックな部分を活かして歌ってもらいたいって話したね。曲自体は、ポジティブにしたかったんだけど、いわゆるアメリカ風のハッピーなものは嫌だったから、あまりハッピーにしないでくれって。詞は彼によるものだけど、自分的にはイメージ通りだったな。「ロックスター」は、一時期ロックスターだった人が、ある日を境として、落ちぶれていくって話だし、「ダムガール」は、運命では恋人であるはずの二人が、最終的に巡り会わないで終わったという内容。「マン・オン・ザ・ストリート」は、路上生活をしている人の歌なんだけど、どれもただ明るいだけの曲ではないよね。
--- なぜハッピーでないストーリーにこだわったるんです?
A: まぁ、私自身の経験上からも、人生はそうバラ色でないと思っているからね。良い事には必ず終わりがあり、辛い事も楽しい事もいつかは終わる。大事なのはハッピーエンディングでなく、希望を持って今をエンジョイすることだと思ってるからだ。
--- 今回のアルバムの仕上がりについてはいかがですか?
A: かなり満足だね。聴いた人は、皆、好きになると思うな。自分なりに、好きな部分を見つけることのできるアルバムになったと思うよね。
--- 今回、改めて感じたサイレント・ポエツの魅力とは?
A: やはり、下田の音楽は、非常に想像力をかきたてる類のものなんだなと感じたね。文学でもアートでもそうだけど、人間を想像の世界に誘うものは素晴らしいよね。一人一人が想うものはきっとそれぞれだとは思うけど。
--- プセの今後について教えて下さい。
A: 現在、アイデアを考えてるところだね。そもそもイエローを離れて、自分がやりたいのは、計算されたマーケティングの中でリリースするのではなく、純粋に自分が敬愛できる人の作品を、出したい時に出すということ。形にとらわれず、軽いフットワークでさまざまな作品を出していきたいね。
Interveiw by Tomoki Ohno

Michiharu Shimoda
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