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LINER NOTES ライナノーツ
Chicken Lips  "Making Faces"
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Once Again Back Is The Incredible! text by 二木崇
MURO
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MURO "MUROTIMATE BREAKS & BEATS VOL.2" ライナーノーツ

01. UHUHUHUHUHUHUH!!!!!!! feat. TWIGY
"コンセプト無きコンセプト・アルバム"ながらも、『20 Street Years』と銘打たれているだけある凝縮されたキャリアが感じられた同作所収の、TWIGYとの共演曲。ブリッジの掛け合いの締めの一言が「MICROPHONE PAGER!!!!!」だけに、思わず拳を固くしたペイジャー・ファンも多かったことだろう。パーカッション使いの効いたファンキーなトラックに、この2人のコンビネーションとくれば.....。TWIGYのイントロ・マンぶりも相当格好良い。DJ YASのアルバムでの「READY GO!」も必聴。

02. CHAIN REACTION feat. UZI, DELI, Q, BIGZAM, TOKONA-X, GORE-TEX
ブッといゴールド・チェインがトレードマークだったDJ=ジャム・マスター・ジェイにも秘かに捧げられていたEP「Chain Reaction」のリード・トラック。NITROからGORE-TEX、BIGZAMにDELI、U.B.GからUZI、M.O.S.A.DからTOKONA-X(R.I.P)と、ペイジャー・チルドレン世代の猛者を集めた男クサいマイク・リレー。KRUSH POSSE時代にも「リズムが生み出すChain Gang」という名フレーズを生み出しているKINGが「ビートへのハメの上手さが独特な」連中に声を掛けただけある強烈な連鎖反応。モチーフとなったのは"ストロング・シティ"の変り種的ラガマフィン・宴bパー=ドン・バロンの同名曲(ナイス・ミドル!)。またP.Vにはディミトリ・フロム・パリもキャメオ出演してたりする。

03. M★BOOING feat. MIKRIS, MARSMANIE, MACKA-CHIN
頭文字"M"のラップ・ゲーマー4人で繰り広げるGangsta Boogie。TEAM 44 BLOXの一員でもあるMIKRISとMARSMANIEは、それぞれに日本人離れのMADなスタイルを確立させているヤングスターで、MACKA-CHINはKINGをして「"下町育ち"と"変態"という共通点がある(笑)」と言わしめただけある相性の良さ。王道のクラップ・ファンクに冴えまくる"M"野郎たちのフェティッシュなライム遊戯。星の字はコンバースの"オールスター"調で4649。

04. All★STAR feat. LUNCH TIME SPEAX, KASHI DA HANDSOME
DJ MUROのプレイも楽しめる渋谷の大バコHarlem発のコンピレーション第・弾の為に制作されたパーティー・ラップ・チューン。KINGとマイクを回すLUNCH TIME SPEAXのGOCCI、TAD'S A.C.、そしてKASHI DA HANDSOMEの3人は、実際にサイド・マイクを努めたこともあるMCたち。MURO作品では珍しい一曲である。ベスト・アルバム『BACK 2 BACK』でも自らセレクトしていたくらいの"お気に入り"。

05. HIP HOP BAND / BOO feat. Muro
  ステッツアソニックの同名曲を独自の解釈でリメイクした、『PAN RHYTHM』収録曲でバハマで撮影したP.V.も存在する重要曲。「ジャンル同士コラボして生まれるFUNK これがK.O.D流 BRAND NEW FUNK」というMUROのラインは、彼のパッチワーク手法そのものを表していて、"バンド仲間"というくくりには、ネタの盤やそれを取り込む機材、そして歌とラップの鮮やかな二刀流を見せるBOO、ここぞというところでコスリまくるDJ VIBLAMも含まれている。

06. SPACE FUNK 2001 (Ulterior remix) feat. NIPPS
アメコミ調のアートワークも目を惹いた、MUROとNIPPS (ex. BUDDHA BRAND)との超合金的連作プロジェクト「SPACE FUNK 2001」「GALAXY PIMP 3000」からは前者のE.Pより、ストレートなUlterior Remixがピックアップされた。後に自らリイシューに携わったマンゼルの「SPACE FUNK」にヒントを得た。モンド感(P.V.に注意!)すら漂うギャラクティック・ワールドは、どこまでもブッとんでる"相棒"、緑の五本指、HIBAHIHIことNIPPSにもうってつけのモノだった。

07. MADE IN JAPAN 2004 feat. TWIGY, E.G.G. MAN, HAB I SCREAM, BOY-KEN & YOU THE ROCK★
YOU THE ROCK & DJ BEN THE ACEの1stアルバム『Right But Fat』('93)に収録されていた「Made In Japan」のリメイク。現在は活動していない(らしい) MINIDONと同じ面子で、あれから約10年後の未来となる未来への展望をうたったこの曲は、『BACK II BACK 2』のために行われたスーパー・セッション(BEN THE ACEによるリミックスも有)。オールドスクールを肌身で知る者たちの一言一言は実に重い。ポップでハイセンスな P.V.も話題に。

08. CREATOR 2005 feat. DABO
MUROのフェイバリット・グループの一つピート・ロック&CL.スムースのクラッシック「Creator」を下敷きにした"Mr.フダツキー"DABOとの意外にも初となるジョイント曲(共に"マチガイナイ"が口グセ)。オリジナルな表現とメソッドで"作品"やシーンを創ってきた2人だけに「空を見ろ 我らがSUPER HERO 無から有 創り出すAlchemist 切り開く道さながらMalcom XまたはKING」(DABO)等の粋な名言が続々と・・・。スカのバックビートで組み立てられたトラックのシブさも特筆すべきだろう。

09. DIG! DIG! DUG! feat. TINA
DIG DUG(アーケード・ゲーム)世代は特に嬉しい(?)KINGの"掘りの深さ"をうたったディグ讃歌。タイトな掛け合いを演じる相手は、ファンクのイロハを知る大型シンガーTinaで、「Dig On Summer」から幾度となく焼く "音と歌のコラボ"は彼女のソロ作でも味わえる。「T.I.N.A. フリーキーフロウは欠かせん くされ”縁”だけにくたばれん」というラヴ・コールも凄いが、誰も知らない秘蔵レア盤から抽出したループの中毒性も凄い。

 

10. PATCH UP THE PIECES feat. FREDDIE FOXXX AKA BUMPY KNUCKLES
当初は"Hip Hop Creators"という仮タイトルが付いていた。ピート・ロックと、フレディー・フォックスの"大魔神"キャラ、バンピーナックルズというNYのヒップホップ・ジャイアンツを迎えた、東京レコーディング曲。この直後に「The Chance Sellor」という名曲も発表しているその2人は、MUROのトリッキーでいてツボを心得まくっているフロウと、ヒップホップの本質を促えたリリックに驚かせたとか。MUROもまたピートが用意した映像が目下に広がるようなサウンドに哈されたらしく、この"関係"はピートの新曲「Revenge」をMUROがリミックスしていることからも判る通り現在も続いている。

11. 病む街 Pt.2 feat. TWIGY& RINO
MICROPHONE PAGER時代のラスト・レコーディング曲の"続編"。RINO LATINA IIのリクエストにより実現したこのパート2は、TWIGY、RINOそれぞれのアルバムでトラックを変えて歌われることに。特に「バスドラ発スネア行き」でも顔を合わせることとなるDJ MAKI(THE MAGIC)が手がけたオリジナルとはまた別角度からのアプローチとなるトラックは、MURO自身が温存していたモノ。「タフでナンボのこの世界でさす、ラクでどこまで行けるかな」というあの名フレーズをスクラッチしているのはDJ WATARAI。

12. LYRICAL TYRANTS feat. DIAMOND & O.C.
  アルティメイト・フォース時代から活躍している、"D.I.T.Cのご意見番"ことダイアモンドの制作共演ヴァージョン。「Vol.1」収録のリミックスではサビがオールドスクール路線の歌っぽいモノ生まれ変わっていたが、この元版は"(JFK空港ですれ違う)世界を股にかける3人の漢たち"の掛け合いがメインとなっている。ATCQ「Awards Tour」からの引用も技アリのダイアモンドの1stヴァースも聴きモノ。「音楽の知識は並外れてるし、フロウも最高。感覚的にどこか俺たちに似たものを感じて仕方ない」というのはO.C.のMURO評。

13. SPREADING FUNK VIRUS
  ファンキー・ウィルスに感染した人たちが街中で急に踊り出す、という画もあったシェイディ監督(ATCQ、ブランド・ヌビアン、ファットジョーのP.V.も撮ったニューヨーカー)のP.V.も制作された、"K.O.D.P アルバム"のオープニング・トラック。60年代のJBが表意したかの様なヤバい"動き"とシャウトでお馴染みのオーサカ=モノレールのリーダー中田亮のパートを、あたかも7 吋盤からサンプリングしたかの如く、ダスティーに聴かせる術はKINGならでは。ブラックスプロイテーション・ムービーばりのこのクロいセッションで"FUNK"に目覚めてしまったヒトも少なくない、とか。

14. HALL OF FAMER
  「Globe-Trotters Tour」ではスタンド・マイクに寄りかかりながら歌う姿が印象的だった、『PAN RHYTHM』の最終曲。ラストの新宿Liquid Roomでは舞台上でも共演した、人気ギタリスト兼ヴォーカリストのSAIGENJIによるブラジリアン・フレイヴァーのコーラスも耳について離れない、実に感動的なこの曲は、約十年後のMUROが孫の手を引いて"ヒップホップの殿堂"を覗きに行く、というストーリー物。"何かに影響されながら、自分だけの道を歩んでいく"のは何もヒップホッパーに限られた話ではない。

15. BOHEMIAN (BAH SAMBA RAP mix
E.P 「LYRICAL TYRANTS」に収録され、後に仏"イエロー・プロダクションズ"発の『Bossa Tres Jazz 2』にも入り、12吋盤も海外リリースされたバー・サンバによるパーフェクトな4つ打ちリミックス。オリジナル(P.V.有)は、4 HEROやビョークとの仕事で知られるエヴァートン・ネルソンのストリング・アレンジが活きた、旅路という壮大なテーマそのものの仕上がりだったが、こちらはかなりフロア向き。ハウス、ジャズ系ではバー・サンバ関連作を意識的にプレイしていたMUROだけに、このリミックスもまた実用性の高い逸品、となった。

この様に常に「未来のリズムのデザイン」を続けながら、ヒップホップの王道、ルーツを示してきたMURO。彼の"冒険心"は未だ留まることを知らない。その新しいサウンド、アプローチは最新作となるプロデュース・アルバム『Tokyo Tribe 2』で公開されるハズ。その前にこの御来光の如きULTIMATEなメイン・ディッシュ・コレクションを味わい尽くす、というのが力というもの。感謝、感謝、この出会いに感謝である。まさに。

2006年11月 二木 崇(K.O.D.P/D-ST.ENT.)

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