Once Again Back Is The Incredible!
思えば"Incredible"を立ち上げてからのMUROは、本当に凄かった。いやずっと凄い、というべきだろう。やりたい事、やるべき事を常に高い次元で具現化する。そんな印象が強い。だがそれは決して仕事の量や立ち回りのハデさを指すのではなく、一つひとつの"責任感溢れる"作品の濃度にこそ表れている。
これはMUROの1stアルバム『PAN RHYTHM : Flight No.11154』に寄せた拙稿からの"引用"だが、その"印象"は6年後の今も何ら変わることがない。DJ/プロデューサー/ラッパーとして、マイペースに"音好き"をエレクトさせ続けているKING of DIGGIN'=MUROは、今日も今日とてどこかの"穴場"で新たな出逢いを求めて黒いお宝を掘り起こしている筈だ。
Still Diggin', Keep On Diggin' 365 掛けること21年と数ヶ月。HIP HOP IQ250以上(測定不能)のこの真のプロフェッサーにとって、そのキャリアの節目となる"20周年"を迎えた昨年は『20 Street Years』(及びインスト音源のミックスCD)のリリースや、それに伴うageHaをフル活用しての自身主催のビッグ・パーティー等があった訳だが、
渋谷の基地「SAVAGE!」がディケイドの時を刻むこの2006年もそれに負けず劣らずのビッグ・イヤーになった。
あらゆるジャンルの掘り師コレクターや皿廻しDJが刮目するUKの復刻音源を主軸とするレーベル"BBE"からのミックスCD『Kings Of Diggin'』(USのコン&アミルとのフプリット)のワールドワイド・リリースに、ピート・ロックの新釣曲「Revenge」のリミックス(早くも欧州の皿相場では高値を付けている!)を始め、
数々のプロデュース・ワークやリ・エディット・ワーク......そうしたKING"ならでは"スケールのデカい仕事ぶりは当然ながら、『MURO TOKYO TRIBE2』にもしっかりと繋がっている。
(プロ)デューサー・ボックスから引っ張り出された珠玉のネタ盤からドリップされ、独自の手法でブレンドされた"罪作りな漆黒のDOPE BEATS"は、ゴーストフェイス・キラー、
レイクォンのWuコンビから、MURO永遠のアイドル=クール・G・ラップ、そしてMICROPHONE PAGERの盟友TWIGYら日の丸代表MC'Sらが喜々としてRECしたほどのモノであり、ジャスト・ブレイズやアルケミストといったビート職人たちのアッと驚く起用にも"プロデューサー"としての彗眼がファラオの如くギラリと光っている(そう言えば、"サントラ狂"で知られる彼が実際にそれを手掛けるのは今回が"初"、となる)。
「あらゆる面で本場(US)に負けない、それ以上にヒップホップの核心を突いたオリジナルなサウンド・ライブラリー」を築き上げるべく、MUROが98年に立ち上げた"Incredible"の歴史も俯瞰したかのような、決定盤的新編ベスト2集(ムービー、P.V、ライブ・フッテージからなる映像集付き)と併せて聴けば、"KINGのKINGたる所以"がしかと味わえるだろう。
You Ain't Nothin' But a Hip Hop Music!キッカケはM.U.R.O.!そんなアナタは幸せ者。マチガイナイ!!
2006年11月
二木崇(K.O.D.P. / D-ST.ENT.) |