”音波奴隷” feat. LORD FINESSE
ロード・フィネス本人より彼のクラシック音源のリミックス依頼を受けたMUROが真っ先に思いついたアイデアは、この時空を超えた究極のコラボ、だった。ある意味D.I.T.C.よりも”らしい”王道のビートに、真空管アンプで録られたMUROのヴァーズがどれだけ”当時の「Funky Technition」のフリーキーなフロウにハマっているのかは言うまでもないだろう!「音波奴隷」という声ネタから引用した邦題(?)も70年代の邦画みたいでグッとくる。
”10%無理” NITRO MICROPHONE UNDERGROUND feat. MURO
NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの2ndアルバム用にMUROが用意した、とびっきりのファンキー・トラック(リミックスも有)。MURO〜MACKA-CHIN〜DELI〜BIG-Z〜S-WORD〜GORE-TEXの順でリレーされるマイクの黒光り度も相当なもの。”2004マス対コア”というフレーズにもある通りのサッカーMC物(”100%DISS”?) だか、ありがちな表現が殕ど見当らず、また彼らのユーモアをまた別な角度から引き出している点もサスガ、である。
NEWYORKIN' IN T.K.O. feat. BIG-O, XBS
自他共に認める”紐育バカ”3人が折りなす、NY、東京会往来物語。BIG-OはSHAKA ZOMBIE、XBSはNITOROのメンバーとして知られる通りだが、またそれぞれ”PHENOMENON”、”NITORAID”のディレクターでもあり、”SAVAGE!”をプロデュースするMUROとの共通項も少なくない(超の字の付くキックス・マニア等々。)「ホコリかぶった買い付け年表は今となっちゃ1番の燃料」などのパンチライン多し。ビック・アップルをうろつき歩く時のテンポはまさにこんな感じ?
”SOUND OF SAVAGE!” feat. GORE-TEX, SUIKEN, S-WORD, KASHI DA HANDSOME, GORIKI, JOE-CHO, HIPSTER
今年で10周年の時を迎える渋谷宇田川町の”Bなアジト”SAVAGE!の歴代スタッフだったオールスターが次々にスピットする文字通りのSAVAGE!アンセム。選び抜かれたディスコ・ブレイクスに、気持ち濃いより凄く濃い”アシ”を出してるMCたち。それはさながら”イケてるモノしか置いてない”あの定位置の基地の如し。ヴァイナルからミックス・テープ、買い付けギアからオリジナル物まで、”ここから”発信されたものがどれだけ多くの人に影を与えた事か…。
”PAN RHYTHM ”
MUROが機長となり、世界中のビートを掘りまくる、という”リズムの旅”をコンセプトとした、ソロとしては初のフル・アルバム『PAN RHYTHM Flight :No.11154』のタイトル・トラック。軽快に転がるピアノ・ループに、早口スタイルでラップするMUROの”プロデューサー”と”MC”としう2つの顔のバランスが良く出た当時を象徴するような一曲、である。とにもかくにもこんな壮大なテーマが似合うヒップホッパーは彼だけ、だろう。
”K.M.W. (King Most Wanted)”
トイズ・ファクトリーからの第一弾リリースとなったミニ・アルバム『K.M.W.』(初回盤は六角ジャケットだった)のタイトル曲。一言でいうなれば、(リリックにもあるように)東京渋谷スパイ大作戦。Keep On Diggin’ 365.を地でゆくライフ・スタイルで有名な彼のセルフ・ボースト物だが、ここまで詩的に”掘りの美学”をスト−リーとして聴かせるMCなど他にいやしない。ちなみに指名手配されたKINGをトランシーバー片手に追跡するキャストはGORE-TEX、KASHI DA HANDSOME、GK MARYAN、LIL’MUROの4人(登場順)。
”THE VINYL ATHLETES” feat. AG
「ゴールなどないトラック走り」という・の最終のフレーズに呼応した、日米黒指競技連盟(K.O.D.P.+D.I.T.C.)のテーマ曲。「真ッ黒ニナル果テ」。オリジナル・ヴァージョンはMUROとフィネスによる伝説のスプリット・テープ『King Of Diggin’』で”予告編”的に披露されていたが、99年12月にEPとして世に出た盤には、MUROによる別トラックの2verと、フィネスによるリミックスの三態が収められていた。A.G.はこの直後リリースされることとなるD.I.T.C名義での初アルバムについても予言(と言うか宣伝)。ブロンクスでシューティングされたP.Vも話題を呼んだ。
”CHECKMATES” feat. DEV LARGE
”掘り師”と言えば、この男の存在も忘れてはならない。Dev-Large。現在はD.LあるいはDJ BOBO JAMES’の名で活躍中の彼がこの"マイクの飼い主"とタッグを組んだのは「XXX-LARGE Pt.2」以来のこと。サブジェクトは言うまでもなく”Back To Basic”、もしくは”改正再開始”。通称”K.O.D.P.アルバム”こと『King Of Diggin’ Presents… Sweeeet Baaad A’s Encounter』の大ラスを飾ったこのビッグ・コラボは、Shibuya CLUB QUATTROでの「K.O.D.P. LIVE CONVENTION ’03」でも”再現”された。
”11154”
時代の先を行っていたサンバ調のシングル「El Carnaval」の併録曲にして、リスナーへ”続くアルバムへのヒント”を与えた重要曲。そのシークレット・コードの読み方は1stヴァースにもある通り11=K、15=0、4=D、となり、それはかの”サスペンス・マニア”A.G.が教えてくれたものだとか。「走り続ける三十数名の騎士 意志固めて選んだそれぞれの道」という一節からも判るだとうが、これはK.O.D.P.という名の”アツくてユルい超党派ファミリー”の指針的な内容の楽曲、である。
”HAN-TOME (BOA-VIAGEM remix)”
志半ばに他界した友人に捧げた名セリフ・リミックス(元版は『Hood』のサレトラに収録)。そのリリシストぶりは、「悪魔とはまさか俺たち人間 ケダモノのように奪い合う金券 天使とは今は亡き犠牲者 自分の先祖が運命の指令者」というライン(問答?)からも伝わってくる。寂寥感がせきを切って溢れ出す美しくもドープなトラックに、HARU(=TIGER)のコーラスも効いたこのリミックスの他には、プーチョ&ザ・ラテン・ソウル・ブラザーズのエディ・パザントのフルートが乗ったインスト版も存在する。
”DIG ON SUMMER” feat. TINA
98年に念願だった自信のレ−ベル”インクディブル”を立ち上げたMUROが、その一発目に用意したシングルは意外にもメロウな夏の終わりのラヴ・ソングだった。MISIA「つつみ込むように(DJ WATARAI Remix)」で試みたポエトリー・リーディング調のラップの発展型的スタイルと、『Diggin’ Ice』に入っていてもおかしくない清涼感とマッドネスがない混ぜになったトラックとの相性はまさにジャスト・フィットだった。アンニュイな表情のジャジーなVo.を聴かせるTinaとの相性も言うに及ばず、最高だ。
”25/7(7DAYZ remix)” feat. PUSHIM
Harlem土曜の「No Doubt」仲間でもあるDJ HAZIMEのリーダー・アルバムで実現した”レゲエ界のクィーン”PUSHIMとのデュエット曲。これは同曲のMUROによるリミックス編(アルバム『20 Street Years』収録)。KINGをして「その声に歌に恋をした」と言わしめたQUEENの胸を締め付けるような歌いっぷりはどこまでもソウルフル、である。未だ見ぬ”素敵な音(盤)との出逢い”を恋愛に喩えるのが上手いKING”ならでは”の粋なフレーズが散りばめられているのは言わずもかな。
”HALLUCINATION” feat. DJ KRUSH
KRUSH POSSE以来、約12年ぶりのセッションとなったDJ KRUSHプロデュース曲(勿論ソロでは”初”)。MUROのこれまでのキャリアを総括する意味で編集されたベスト盤第一集『BACK II BACK』の唯一のニュー・レコーディングとなったこの曲で、楽曲上での”再会の握手”を交わした2人は、あの頃の失わずに突き進んできたそれぞれの道を確認し合ったかの様だった。「奴らのBEATにゃ万年口が開く」という一言も間違いなく”本音”だろう(思わずサンプリングしたくなった、とか)。”Tokyo No.1 Posse!”のキメ台詞も嬉しい。束の間のリユニオンだった。
” LYRICAL TYRANTS FROM LOCAL TO GLOBAL” feat. O.C.
「The Vinyl Athletes」と対を成す、D.I.T.C.のO.Cとの共演曲。オリジナルは『PAN RHYTHM』に収められていたダイアモンド制作によるヴァージョンだが、DJ WATARAIが手掛けたこのリ・カット新版はMUROのアルバム・リリース・ツアー『Globe Trotters』(ライヴ映像作も有)の為に来日したO.Cと共に東京でP.V撮りも行われたもの。トラックのみならず、フックもまったく異なるもに差し替えられている。そのシングルには、先のツアーにも参戦した精鋭外人選手ファロア・モンチの手によるリミックスも一部含まれていた。
”浪漫 SOUL” feat. 鈴木雅之
泣く子も黙るジャパニーズ・ソウルマン-MARTINこと鈴木雅之をフィーチャアした”掘り師のソウル・マナー”溢るる至極の一品。「ハイテクじゃ出せないローテイクな味を」体現するにこれ以上相似しい相手もいまい。MUROはシャネルズのリミックス仕事も受けてる。そう言えばサンプリングとパクリの大きな違い。それはどれだけ深く”掘っているか/理解しているか”の明確な差、である。これぞ現代版(”音楽”としての)スウィート・スウィート.ソウル・ミュージック。そこに込められたメッセージはかなり”ビター”。”大人な(アダルティー)”とも言い換えられるが。
どうだろう。元々、一曲一曲のクオリティの高さが並外れたものばかりなので、どう組んでも”間違いない”のがだ、この”流れ”で聴くとKINGらしい仕掛け(コード)が見えてくる様で、、、。おっと、締めに入るにはまだ早かった、、、。では、Vol.2でまた会いましょう。
2006年11月 二木 崇(K.O.D.P./D-ST.ENT.) |