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INTERVIEW インタビュー
THOMAS CAMPBELL, TOMMY GUERRERO, AND MONEY MARK インタビュー
--- 今の西海岸のシーンでは、音楽、アート、映画、スケート、サーフィンが融合されているようだけど、その辺について新しい動きはある? 『The Moonshine Festival』が行われて、そこでトミーが出演して、サーフィンでは収まりきらないようなイベントになっているような気がするんだけど。西海岸のカルチャー・シーンでそういうことよく起きているの?
Thomas Campbell(以下TC):
日本ではどうやって捉えられてるかは分からないけど、常にそういう要素は融合されていたんだ。ひょっとしたら『Sprout』や『TheMoonshine Festival』が、それをみんながもっとはっきり見える形にしただけなんだと思うよ。参加してるミュージシャンやアーティストはみんなお互いのことを知ってるし、一緒に作業することが多い。ミュージシャンがジャケットや映像を必要とするとき、ボクは何かを提供したりするし。
Tommy Guerrerro(以下TG):
トーマスが、全ての要素が融合されてると言ったけど、ボクもスケートし始めた時から、音楽とスケートを両方ともやるのがライフスタイルだったんだ。パンクとスケートは切り離せない関係だった。トーマスが言ったように、もともとひとつだったんだ。でも最近は、企業がマーケティングのために、そういう要素を融合させて売り出そうとしてるだけなんだよ。
Money Mark(以下MM):
過去100年間において、人間の世界では音を記録させ、画像を動かすようになった。でもその前の時代は、全てのアートがひとうだったんだ。エレクトロニクスの世界が、物事を細分化させ始めた。そして、それがまた融合し始めた。そう音楽、ダンス、シーン、イベントは、昔、全てひとつのものだったんだ。そして近代テクノロジーによって、サウンドとビジュアルが区別されるようになった。無声映画がまず映像と音を分離させた。後でまた、音と映像がひとつになったんだ。でも人間の中には、それらの要素がひとつになってると思うよ。
--- 今のカリフォルニア、西海岸のカルチャー・シーンで、これは気になるというものは何?
MM: 海にスライドして入っていくことかな(笑)?
TC: ひとつの重要な新しい動きは、チカーノ・コミュニティがモリッシーを大好きになったということ(笑)。それは本当に巨大なシーンになってるんだ。カリフォルニアで最近起きた一番クールな動きだよ。
TG: しかも、チカーノのギャングの連中がモリッシーを聴いてるんだよね。
TC: そうそう。ボクの家の前のギャングの連中が、モリッシーを聴いてたしね。セントラル・バレーの方でそういう連中が多いんだ。フレズノにメキシコ移民の農民が多いんだけど、モリッシーがでかい会場でライヴをやって、チカーノ・コミュニティの連中がみんな見に来るよ。
TG: チカーノのラッパーがモリッシーをサンプリングすると格好いいのにね。ボクが最初に作ったビートも、昔の話なんだけど、モリッシーの曲をサンプリングして、ジェームズ・ブラウンのビートを乗せた。リリースはもちろんできなかったけどね(笑)。聞いた話だけど、モリッシーはアルヴェズという男とつきあってるんだって。ボクは、アルヴェズの従兄弟を知っててね。不思議な話だよね。ボクは実際にはそういうチカーノの連中をまだ見たことないんだけど、話はよく聞いてる。
TC: その話を聞いたときに、『Heavy Metal Parking Lot』の、モリッシー・バージョンを作ったら面白いのにと思ったんだ。でも話によると『Heavy Metal Parking Lot』で、既にそういう映画を撮ってたんだ。『Heavy Metal Parking Lot』は、'84年のジュダス・プリーストのコンサートに集まったメタル・キッズについてのドキュメンタリー。すごく笑えるのが、ロブ・ハルフォードがゲイだから、ファンは「あのバンドはヤバイんだけど、シンガーはよく分からない」とか言うんだよ(笑)。
TG: そのシーンがカリフォルニアで最も重要なシーンだね(笑)。
TC: でも日本にはハードコアなチョロ(チカーノ・ギャングスター)がいないから、面白さが伝わらないかもしれないけどね。ローライダー、カーキのパンツとかが、今も流行ってるけど、ボクは12歳の頃からローライダーをよく見てたよ。
TC: ボクもスケートしてた頃、チョロのグラフィティしかなかったけど、それはすごくカッコ良かったね。
MM: ガーデナのギャングはG13と呼ばれてて、ロングデール出身の連中はL13と呼ばれてた。
TC: チョロの連中がモリッシーを聞いてるっていうのは、すごくハードコアなヒップホッパーが、ボーイ・ジョージを聞いてるのと同じようなものなんだ(笑)。スヌープがボーイ・ジョージとツルんでたらヘンだよね(笑)。
MM: でも人ってヘンなものにハマったりするものだよね。インターポルのベーシストが、URBマガジンの表紙になったんだよ。
TC: なぜ?
MM: 分からない(笑)。
--- スケーターやサーファーがペインターになったり、ロック・バンドをやったりというのはよくあるの?それとも、前からあったこと?
TG: 増えてると思うけど、そこにはいろんな動機があるよ。
MM: 何が起きてるか教えてあげるよ。ローライダーは、クルマに巨大なリムを取り付けてる連中と衝突してるんだ。モンテカルロていうのは、もともと低いクルマなのに、でかいリムをつけて高くしてるヤツもいる。見た目がオモチャみたいですごく格好悪いんだ(笑)。どうなってんのっていう感じだよね。今は、ローライダーも過渡期なんだね(笑)。でも最近のキッズは、iMacみたいなベーシックなコンピュータで映画を作ってるよ。
TG: そうだね、キッズたちは音楽やいろんなものをコンピュータで作ってるよ。
TC: 多分、700人くらいのキッズがマニー・マークみたいなレコードを作ってるよ。
TG: 899人くらいは、作品を完成しないんじゃないか(笑)。
MM: カリフォルニアは、シュワルツネッガーがダメにしちゃってるんだよ(笑)。ボクはわりと自分の世界に入ってて、ベッドルームでいつも曲作りしてるから、何が今イケてるかは気にしてないよ。モールには行くけどね(笑)。最近のキッズは、5年前に比べて、楽器を持ってバンドをやってる。以前はDJの方が流行ってたけどね。バンドが増えてると思う。トリオが多いね。それでカリフォルニアには、iPodショーが増えてるんだ。iPodを使ってウェブキャストをやってるキッズがたくさんいるよ。
TG: 自分でラジオ・ショーを作って、iPodで放送してるキッズがたくさんいるんだ。
--- ねぇ、トミー、いろんな動機でバンドをやってる連中がいるって?
TG: 本物のアーティストで、20年間ずっと続けてる人もいれば、ただ流行ってるからバンドをやり始める人もいる。マークが言ったように、楽器を演奏してるキッズは増えてるよ。本当に演奏したいと思ってるキッズが増えたのは、素晴らしいことだと思うね。
--- 最近気に入ってるバンドとかアーティストは?
TG: 面い双子のユニットがいるんだ。彼らって年いくつなんだっけ?
TC: 19歳だよ。ザ・マッドソン・ツーというんだ。
TG: 彼らは本当に凄いんだ。ギターとドラムのふたり組なんだよ。
TC: 彼らは『Sprout』のエクストラの「A Day In The Life Of Alex」(アレックスの一日)という部分の音楽を担当してるよ。
TG: 見た目はすごく普通なんだけど、演奏すると凄いんだよ。ビバップっぽい演奏をする。
TC: この間、Xのドラマーのエイドリアンが「双子に頼んで一緒に結婚式に演奏するんだ」と言ってたんだ。双子に話したらなんかDJの人と演奏するんだけど、彼はパンク・バンドもやってるらしいんだ」って。彼らに言ったよ「お前らはどれだけラッキーか分かってないよ!」ってね(笑)。
TG: Xのドラマーが、若くてクレイジーな双子を見て、驚いてるのが目に浮かぶよ(笑)。
TC: 双子の兄貴がすごく上手いスケーターで、それがきっかけで友達になったんだ。彼らはただの音楽オタクなんだよ。彼らの父親もサーファーだったらしいよ。
TG: すごく若いのに、すごくヘンな演奏をしてるよ。
--- なんかチョロやモリッシーの話には、びっくりしたんだけど。
TC: その話を聞いたときはすごく嬉しかったんだよ。ザ・スミスは最高のバンドのひとつ。人生でずっと続けて好きなバンドは、ザ・スミスとザ・ストゥージズだけなんだ。彼らは今も昔も最高だからね。
TG: ザ・スミスを聞いて、連中は癒されるんだよ。ボクの持論は、ハードコアなギャングの連中は、仲間が撃たれたりすると、ザ・スミスを聞いて心を慰める。
MM: ロサンゼルスにはハリウッドがあるし、北カリフォルニアにはコンピュータ・オタクがたくさんいるしね。でも減ったんじゃない?
TG: でもまだいるよ。このシーンって、もうなくなったと思ったんだけど、まだいるんだ。金持ちのヤッピーどもで、まだ同じライフスタイルを続けてる人がいる。
MM: 優れたインディ映画を作ってる人は、たくさんいると思うよ。
TG: カリフォルニアの州知事を見れば分かるけど、政治の状態がひどくなると、必ずいいアートが生まれてくるものなんだ。社会状況が悪化するということは、クリエイティブなものが生まれるために適した環境になることだと思う。ブッシュやシュワルツネッガーがいるから、それに対抗したアートが生まれてきてるんだよ。レーガン時代と同じだよ。あの時代からたくさんのアートが生まれたのと似ている。
--- 第2次世界大戦やベトナム戦争、湾岸戦争の時代もそうだったけど、戦争が起こるとなぜかサーフィンが人気になるのと似てる?
MM: スポーツ全般が上がるんだ。
TC: 社会状況に対して感覚を麻痺させたいからじゃないかな(笑)。出来る限り、波のチューブの中に隠れようとするのかもしれない(笑)。
MM: ブッシュは海の中にはいないからね(笑)。
TC: でもトミーは泳げないからね。
--- トミーの『The Year of The Monkey』やマークの『Change Is Coming』は政治的な作品だったし、『Sprout』もサーフィンにおいて違う方法論を見せているよね。
TC: そうだね。『Sprout』は、サーフィンに対するオルターナティブを見せているかもしれない。でも、そこまで直接的に指示しようとしてるわけじゃない。みんなを変えようとしてるわけじゃない。ボクらはこういうことをやってるんだけど、もし良かったらチェックしてくれ、という姿勢なんだ。みんなをボクらのやり方に従わせたり、みんなを変えようとしてるわけじゃない。この映画は、ボクや友人たちのサーフィンに対する捉え方を表現してるだけなんだ。ボクは仲間を集めて、ボクらがいつもやってることを見せようとしただけだよ。
TG: ボクや他の人もそうだけど、『Sprout』を見ると、サーフィンに対する違う姿勢を表現してるだけじゃなくて、人生に対する違う生き方を表現してると思うんだ。前日あるインタビューで言われたんだけど「『Sprout』を見たりあなたの音楽を聴いてると、トリックやテクニックを全面に出してるんじゃなくて、生き方そのものを表現してる」ってね。その通りなんだよ。実際そういうことなんだ。ボクはサーフィンもできないし、泳ぐこともできないけど『Sprout』を見て楽しむことはできる。世界のどの人だってそうだと思うんだ。そこが素晴らしいんだ。別にサーフィンをやってなくて、レスラーだってこの映画を楽しめるよ(笑)。
MM: そういえば雑誌Giant Robotは、ストアを2店舗も同じ地区に開いたんだ。GREatsというレストランも開いたんだ。ストアのGR2は、いつも展示会をやってるんだ。サンフランシスコの素晴らしいイラストレーターの展示会をやってたよ。
--- 昔からあったカルチャーに対して、一般大衆もこういったサーフ、スケート、アートの文化についてもっと知れ渡るようになったってこと?
TG: ボクは誰も分かってないと思うけどね。一般大衆は分かってないよ。日本は、情報社会だからみんな知ってるかもしれないけど。
MM: アメリカはまだ、サーフィンと言えば、ビーチ・ボーイズや"Surfer Girl"のイメージで止まってるんだ。それが神話になってるんだよ。ビーチ・ボーイズが実際にサーフィンをしてないということもバレたのにね。
TG: サーファーたちは、そういうイメージをずっと嫌ってたよ。
MM: トーマスは、そういうイメージを覆してきたよね。若い人が環境問題に興味をもつようになったけど、それがライフスタイルになってる。ジャック・ジョンソンも環境問題や自然に大きな関心を抱いてるし、高いクォリティ・オブ・ライフに興味をもってる。人はサーフィンなどを通して、そういうことに関心を抱いてる。そういうライフスタイルを発見すると、環境問題に対する関心も抱くようになるんだ。
--- 今、音楽でも何でも、新しいもので気になるものは?
TG: ザ・クラッシュ(笑)。
MM: クィーンの曲とか(笑)。
--- 新しいものでは(笑)?
MM: ボクはアフリ・ランポが好きなんだ。最高だよ。マーズ・ヴォルタもいいね。
TG: ボクは古い音楽ばっかり聴き返してる。ちょっと問題かもね(笑)。ジョイ・ディヴィジョンをよく聴いてるよ。ザ・キュアも大好き。マニー・マークにザ・キュアの曲をカバーして欲しいんだ。新しいものに関しては分からない。この間、新譜を5枚買ったんだ。サム・プレコップの新譜やサークルというバンドのCDを買った。サークルはトム・ウェイツっぽいんだけど、すごくヘンなんだ。ニュー・オーダーの新作も買ったよ。前作のニュー・オーダーはあまり良くなかったけど、そんなに悪くもなかった。ボクはニュー・オーダーの大ファンなんだけど、新作のレビューを読んだら「過去15年の最高作」と書いてあったんだ。聴いてみたら最低だったね(笑)。ひどかったよ。ザ・キュアも「『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』以来の傑作」とレビューされてたから、新譜を買ってみたら。そうしたら、ひどかったんだ。新しいCDを買おうとしたら、どれもひどかったわけさ。ジョイ・ディヴィジョンだけが良かったんだ(笑)。今は何がいいのか分からないよ。
TC: トミー、今なんて言った(笑)?サム・プレコップの新譜は最高だぜ?
TG: まあ悪くはないよ。何度か聴いたけど、悪くない。
TC: サムのファーストは、スリル・ジョッキーからリリースされた最高傑作だよ。
TG: ワオ、そこまで言う?
TC: 新作はファーストよりもいいと思う?
TG: そう思うよ。
TC: マジで?ボクの最近のフェイヴァリットはとにかくサム・プレコップ(『Sprout』のサントラにも収録。日本盤はHeadzからリリース)なんだよ。
TG: ボクは5枚の新譜を買って、そのうちの4枚は期待はずれだった。ザ・キュアの新譜は、リンプ・ビズキットやリンキン・パークのプロデューサーが手がけてるんだ。ひどいんだよ。でかいギター・サウンドが目立って、中身に欠けてるんだ……。
interview by Masahiro Sugimoto

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